ーバンコク首都圏の鉄道整備状況ー
交通渋滞の抜本的解決策となるか
国際ハイウェイプロジェクト推進委員会
東南アジアにおける交通の要衝となりつつあるバンコクは、日常でのクルマ渋滞がひどいことで有名。その解決策として今、浮上しているのが首都圏を中心とした通勤幹線鉄道の導入である。
その鉄道網として、現在、建設あるいは運用ないしは頓挫している計画が三つほどある。
【スカイ・トレイン】
まず注目されるのが1999年末に開通した「スカイ・トレイン」である(写真参照)。開通したのは国立競技場からチャオプラヤ川のタクシン橋までのシーロム線(6.5km)と、スクムビット通りからモーチャトまで17kmのスクムビット線の全長23.5km。
市街地を走る「スカイ・トレイン」
車輌はドイツから輸入したハイテクでエアコンもよく効く。運行時間は通常5〜6分間隔、朝夕のラッシュアワーは3〜4分間隔で運行されている。料金は距離制で10〜40バーツ(バス料金が3.5バーツ、タクシーの初乗りが35バーツ)と庶民にとっては、少々高い。しかし当初、少なかった利用客も、最近では収支均衡と目される一日平均29万人(2002年現在)の利用がある。2003年にはその倍の一日平均乗降客数40万人を目指すという(なお、2003年度の一日平均乗降客数は32万人、前年比10%増)。
(参照):本欄「タイの高架鉄道BTSが開通後初めて黒字化」
(参照サイト):「スカイトレイン(BTS)」(ホームページ)
【地下鉄】
いまひとつが、日本の円借款を利用して現在建設が進められている地下鉄線である(詳細は不明)。
地下鉄内部の様子 バンコク地下鉄の操車場
 今般のタイ政府による、日仏連合受注のバンコク地下鉄車輌などの納入契約の破棄は、それまで不透明であったバンコク地下鉄建設の実情を公にさらした感がある。新聞報道等によれば、総延長約20km(参照:「バンコクの地下鉄概略ルート図)の区間の総事業費は3,956億円(国際協力銀行=JBIC=推計)で、そのうちトンネル掘削やレール敷設などの土木工事に、2,200億円の円借款が投入されている。なお、地下鉄の運営と経営を、タイのチョウカンチャン社とABNアムロ社の民間企業グループに、25年間にわたる「BOT」方式を採用している。
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すでに第一期工事は終了し、残された車輌などの運行システムが、当初の日仏連合の受注からドイツのシーメンスに変更された。この敗因はともあれ、いかに軟弱な地盤とはいえ、そもそもわずか20kmの区間に果たして4,000億円(キロ当り=200億円)もの建設資金が必要か、との疑問がわく。地上交通システムの「スカイ・トレイン」も、一説では運賃の割高感で予定乗車率には届いていない(この車輌・運行システムもシーメンスである)。今後の推移を見守る必要があるプロジェクトには違いない。
(なお、2003年7月に予定されていた開業は、その後延期され、試運転開通は2004年の4月、正式な営業運転開始は、2004年8月に行われる予定。)
【バンコク地下鉄、試運転開始:2004年4月13日】
バンコクの地下鉄がほぼ完成し、4月13日から試験運行が開始された。この試運転は4月13日から18日にかけて、一般市民を対象に公開で行われ、5月には沿線住民・通勤客を対象に通勤ラッシュ時の試験運行を行う予定。そこでの結果次第で、6月からの正式運行となる。
【バンコク地下鉄、ブレーキ系統の故障】
バンコクで試運転中の地下鉄が4月15日12時過ぎ、シーロム駅を過
ぎたあたりで焦げたような異臭が車内を漂ったことから、次の駅のクローン・トゥーイで運行を中止、乗客全員を降ろ して地上へ誘導、緊急避難させた。
その後、車輌製造会社の「シーメンス」社が調査を行った結果、ブレーキ系統の故障が原因だった事が判明した。
【地下鉄試乗会6月へ延期、正式開業は7月中を予定】
5月中に予定されていた通勤時間帯での地下鉄試乗会が6月へと延期されることとなった。MRTAでは、延期の理由を試乗会で見つかった問題点をすべて解決した上で、再度の試乗会を開催するためとしている。なお、正式開通の時期は当初予定の8月より早めた、7月中にはなんとか開業する意向のようである。 |
≪参考図書≫
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【バンコク地下鉄、7月3日開通へ】
 バンコク地下鉄は開業日を7月3日とすることを発表した。現在、行われている通勤時間帯での試験運行で新たな問題点が発見されず、また試運転で指摘された問題点も解決したことから開業日を7月3日とした。同線は「ファランポーン〜バーンスー」駅間(全長20km、全18駅)を30分で結ぶ。運行時間は午前6時から深夜零時まで。通勤時間帯は2〜4分間間隔で運行、通常時間帯は4〜6分間隔で運行される。全18編成(1編成3両連結、定員は886人)で運行。 ≪バンコク地下鉄の開通式(写真左)と地下鉄駅構内(写真右)=2004年7月3日、(C)IHCC≫
【タイの地下鉄で衝突事故、約120人が負傷】
2004年夏に開業したばかりのバンコクの地下鉄、「タイ文化センター駅」構内で1月17日午前9時半(日本時間午前11時半)、地下鉄車輌同士が衝突事故を起こし、乗客・乗務員など約120人が負傷した。乗客約700を乗せ、駅構内で停車していたバンコク中央駅行きの地下鉄車両に、地上で牽引車との連結に失敗し、傾斜に沿って逆走した空の車両が衝突した。負傷者の約120人のうち約20人が骨折するなど重傷。邦人男性(47)一人も軽傷を負った。バンコクの地下鉄は昨年7月、開通したばかりで人身事故を伴う事故が起きたのは今回が初めて。事故原因は、運行制御システムを司るコンピュータ・システムの不良または操作ミスと考えられているが、なぜ回送列車が逆送したのかは不明。スリヤ交通省大臣は、事故原因が究明されるまで地下鉄の運行は中止させる方針と語り、運行再開の見通しは現在のところ立っていない。ーー( 2005年1月17日)
(詳しくは、「Bangkok Subway」(English
、タイ語)参照)
【「地下鉄」7路線の延長・新設】 ≪新規事業≫
タイ・バンコク市内の地下鉄7路線の延長・新設事業が新たに始まる。タイ政府は総額2,800億バーツの建設費のうち700億バーツについて、世界銀行や国際協力銀行(JBIC=現行路線の「フアランポーン〜バンスー」間〔20km〕のトンネルなどの建設事業に総額2,200億円の円借款を供与している。償還期間は40年、利率は0.75%)ーーなど海外金融機関に低利融資を求めるもよう。JBICはすでに政府から打診を受け、地下鉄事業では現行路線に続いて2回目となる円借款を供与する方向で検討を進めている。7路線の総事業費は合計4,100億バーツ。このうち、@トンネルや線路、駅などの建設費に2,800億バーツ、A車両やシステム導入に1,300億バーツを見込み、それぞれ政府部門と地下鉄の運営会社など民間部門が資金を調達する。
また、地下鉄事業を統括する首都電車公団(MRTA)は、2004年9月に建設計画が閣議承認された「バンスー〜バンヤイ」間(23km)に次いで、「ラプラオ〜サムロン」、「パクレット〜スウィンタウォン」の2路線の新設工事に着手する方針を明らかにした。政府の承認を得た後、2006年初めにも2路線の建設に着工し、2009年までの完成を目指す。これら2路線は全線高架式で、建設費は各40億〜50億バーツを見込んでいる。
≪入札には車両製造工場の設置が条件≫
この地下鉄事業を統括する首都電車公団(MRTA)によると、地下鉄路線の拡張・新設事業の入札に、独・シーメンス、仏・アルストム、スペインのCAFなど欧州車両メーカーが応札する見通し。受注企業は「バンスー〜バンヤイ」間(23km)における@建設・車両システムの納入、A車両製造工場の設置も入るもよう。受注企業にはタイ国内で3年以内に工場を設置し、車両や部品を現地生産するよう要請する。MRTAは受注企業に対する優遇措置などについて財務、工業両省や投資委員会(BOI)と協議する予定。工場設置には1,000億バーツ以上の投資を見込んでおり、8年間の法人税免除などの優遇措置を与えることも考慮。これまでのところ、受注が最有力視されている独シーメンスが入札参加の意向を示し、3年以内に車両工場を設置する方針も表明した。また、アルストムとCAFは入札条件や優遇措置などの詳細をMRTAと詰める。このほか、カナダのボンバルディアや韓国の車両メーカーも入札に関心を示している。今のところ日本メーカーには応札の動きはない。
【記】 バンコク地下鉄建設、1,200億円の円借款
日本政府は国際協力銀行(JBIC)を通じてタイのバンコク地下鉄新線の建設事業に310億バーツ(約1,200億円)の円借款を供与する方針を固めた。建設するのは通称「パープルライン」と呼ばれる地下鉄新線。バンコク市内にバンスー地区と隣接するノンタブリー県バンヤイ地区を結ぶ。総延長は23km。事業主体はタイ電車公団(MRTA)で、開通予定は2012年頃(融資は金利1.4%で返済期間は25年)の見込み。
(参照サイト):「バンコクでタイ初の地下鉄が開通」(2004年7月3日)
(参照サイト):「Bangkok Subway」(English)
「ホープウェル計画」
頓挫した「ホープウェル計画」
最後は、香港の建設会社がすすめる「ホープウェル計画」。この計画は、1993年に着手されたのち、97年に建設が中止された。同案は標準軌と狭軌が混じった複々線の高架上に六車線の高速道路を建設しようというもの、総延長60km、総額3,200億円にも上る。同案の頓挫した理由は、アジア金融危機があったとはいえ、既存のタイ鉄道(メーター軌、1,000mm)をうまく活用できず、事業規模が拡大したことにあるようだ。
(参照サイト):「ホープウェル計画ー最新情報」(English)」
【バンコク北部高架鉄道】 タイ政府はこのほど頓挫している「ホープウェル計画」に代わって、首都・バンコクのバンスーから北部のランシット(約23km)までの高架による鉄道(註1)を建設する案を提案する。総事業費は日本円で約1,000億円、官民による事業の建設・運営(PPP (註2))方式を考えている。計画では、頓挫した「ホープウェル計画」のタイ国鉄(SRT)北線高架事業を引き継ぐ予定で、放置されたままの橋脚(上記の写真参照)を再利用。2008年の開業予定。
(註1:この計画に先駆けて行われた会合では、「ホープウェル計画」が残したコンクリート製橋脚のうち、どの橋脚が使用可能で、どの橋脚を壊さなければならないかーなどが研究される。またこの鉄道網は他の路線とも接続させる計画でもある。特に、橋脚の下を通る「メーターゲージ」(1,000mm)軌道は、タイ国鉄(SRT)と接続され、また橋脚の上部を走行する「標準軌」(1,435mm)は空港へと接続される。したがって、バンコク周辺では@通勤電車、A長距離、B空港への郊外型ーーの3タイプの列車が走行することになる。)
(註2:公共機関も出資して設立するジョイント・ベンチャーが事業主体となって、官民が協調して事業の運営に当たる方式)
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途上国での大規模交通インフラ建設には、先進国流の概念(資金運用)は時として通用しない、そのことは過去の実例が示している。「途上国の立場」に立った開発援助の必要性が再認識された、今般のバンコク地下鉄建設の教訓であった。
いずれにせよ、最善の策がいち早くとられ、バンコクの交通渋滞が緩和されることを期待したい。
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