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長年、鉄道をやってきたが、鉄道とは何か。要するに、案内されて走る陸上輸送機関(guided
ground toransportation)である。自動車のように自分で運転するものではない。リニアの最初の記者会見で、超高速新幹線と発表したが、それは新幹線の発表でも聞いたと言われ、違う名称を求められた。超電導磁気浮上列車だと言うと、それでは新聞に書けないと言う。夕刊の締切りまで時間がないとせかされ、リニアモーターを使うから、全部カタカナで「リニアモーターカー」の名称にすることにした。
次に、磁気浮上が言葉として難しい。外国ではマグレブ(maglev)と呼ばれ始めていた。日本も私が去った後、「ジェイアール式マグレブ」と呼ぶようになる。外国では、フローティング(floating)という言葉も使われ、かなり混乱していた。日米のリニア会議で最初の仕事は用語の統一だった。そうしないと議論がかみ合わない。リニアとは「線形」で、AからBまで真っ直ぐ行くことを意味する。車輪走行だと車体の下で車輪が回転している。回転体を展開して目的地に到達する。マグレブを使わなかったのは、アフリカにマグレブという地名があり、現地語で「日の没するところ」の意味だと聞いたからだ。新技術の名称としてふさわしくない。アメリカの担当者にそれを教えると、「だからアメリカの技術は沈んだのか」と言っていた。それに対して日本のリニアは浮かんだのだから、言葉の問題もおろそかにはできない。
アメリカとは十数年共同研究し、途中からカナダやイギリスも加わった。イギリスは空気浮上方式を熱心にやっていた。車体の下から強い圧力で空気を噴き出すと車体は浮く。私が子供の頃、ピンポン玉を空気で浮かしたのを射的で撃つ遊びがあった。あれもエアークッションだ。国鉄でも面白半分で実験してみた。遊び半分でやらないと、いくらでも難しくなって、できなくなってしまう。その技術でイギリスでホバークラフト船が生まれた。
そこでイギリスから大臣や技術者が揃って来日し、売り込みが始まった。元運輸省だからと応対に呼び出された私は、日本には空気浮上は向かないと断った。なぜなら、トンネルで使えないからだ。トンネルの中と外とでは条件が著しく異なり、日本の地形はそれが繰り返すので、難しい。空気浮上は山の多い国には向かない。日本ではリニアでやるしかないと分かり、イギリスはあっさり売り込みをやめた。みんなこれからはリニアの時代になると意識し始めていた。
日本でリニアの浮上実験が成功し、その認識が広まると、ほかへの応用を考えるようになった。1986年に、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故で日系二世のエリソン・オニヅカ(鬼塚)が死亡したので、リニアを使って発射することを提案した。そこで、宇宙物理学者の大林辰蔵東京大学教授と共同研究し、国際宇宙学会で発表した。ロケット発射はリニアが走るのと同じ原理で、私が絵を描いた。宮崎の実験線で走った三輌連結のMLU001の車体を取り払い、走体の上にロケットを載せた。時速500キロになるまではリニアで走らせ、その後、ロケットエンジンに点火する。 |