中国の産業高度化がもたらす資源争奪時代
産業最適地の条件、基礎資源の自給可能地域へ
ー鉄鉱石・非鉄金属の世界的資源不足が顕在化ー


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 現実化しだした中国の産業肥大化

 かねてから懸念されていた中国の産業高度化にともなう地球規模での鉄鉱石や非鉄金属の資源供給不足が現実のものとなりだす事態が始まろうとしだした。2003年度における中国の粗鋼生産量は2億トンを超えるものとなり、2010年度には日本と同様な規模の粗鋼生産量、約1億トンが上積みされ年間3億トンにも及ぶ粗鋼生産量が予測されている。この傾向は鉄鉱石需要だけにとどまることなく、すべての産業ベースに当てはまることになる。特に顕著な資源としては、@石油(参照:本欄「市場経済原理に基づいた原油供給体制)A鉄鉱石B非鉄金属(銅・ニッケル・亜鉛・鉛など)がある。
 ≪本稿の初稿は2003年末頃のものであり、基本的なコンセプトは当時のものである。なお、各種の数値や経済動向等はその都度更新・加筆している≫

 そのうち、中国の原料用鉄鉱石について見てみると、世界有数の埋蔵量を有してはいるがその自給率は60〜70%ほどで、採掘量は年々減少傾向にある。たとえば、1999年の鉄鉱石の採掘量は2億5,600万トンであったが、2002年度は2億3,100万トンへと低下している。この要因として、市場に流通する鉄鋼製品のうちで、国内産で通用する鉄鉱石品位が低く(通常は60%ほどであるが、中国産はそれよりも低い)、中間工程も含めればコスト高になるという現実がある。それにともなって、輸入鉄鉱石量は逆に増加傾向にあり、2001年度は9,200万トン、2002年は1億1,100万トンに達している(なお、2003年度における中国の鉄鉱石輸入量は1億4,600万トン=対前年比31.5%増)。

 ところで中国はこれまで産業用や民生用の一次エネルギーの大部分を自国内で産出する「石炭」で賄ってきた。しかしこの「石炭」に依存した社会・産業構造は、地球温暖化や砂漠化をもたらす元凶でもあるCO2(二酸化炭素)の大量排出をもたらすという世界的な流れもあり、中国も環境負荷への影響が軽減される天然ガスや石油への転換を図りつつある。そのため一時期は石炭の産出量を抑制する方向が打ち出されたこともあったが、近年においては予想以上の電力需要の増加もあり、再び電力用燃料として「石炭」が見直されつつあるのも事実である(一時期、年産14億トンを切っていた石炭の産出量だが、2003年度は16億トンに上り、過去最高を記録している)。

 電力の供給不足がアキレス腱に

 中国はいま、産業高度化への一つの「関門」である、「電力供給」の不足という新たな事態に遭遇することとなった。過度の工場群が集積したことによって、上海市周辺の江蘇省や浙江省などでは今夏の猛暑も加わり、普及しだした家庭用や業務用冷房器具などによる電力過使用のため定期的な電力供給停止を余儀なくされた。この傾向は暖房用器具の使用による冬場においても電力供給不足の解消しぬくい状態は続く。そのため、石炭輸送用列車を1万本増発して、1,000万トン分の石炭輸送に努めるなど、対策を施しているが抜本的な解決には程遠い。2009年における「三峡ダム」の完全竣工による総発電量1,800万kwの送電までには、まだまだ時間がかかり当分綱渡り状態は続くことになる
 (右記の図は「中国の基幹電力網」)

 ロシア、中国への電力売電で覚書調印
 ロシアとの電力購入交渉で中ロ双方の協力拡大を規定した覚書がこのほど調印された。電力購入の窓口はロシアと国境を接する黒龍江省などの華北地区からと見込まれる。ーー(2005年3月)

 日本鉄鋼業界、中国へ環境技術ー温室効果ガス抑制に
 日本鉄鋼連盟は中国の鉄鋼業界に対して温室効果ガスの削減を促すため、省エネなど環境技術の供与を始める。中国鋼鉄工業協会から直接、要請があった。日本鉄鋼連盟は運営委員会で正式に技術供与の方針を決め、近く中国側と交渉に入る。設備投資は原則として中国側で負担する。日本国内のガス排出量は約13億トン(2003年度、CO2換算)で、このうち1割強は鉄鋼業界が排出している。一方、中国は全体で約30億トン(2000年)で世界の13%を占める。ーー(2005年2月20日)

 丸紅、ベトナム産石炭を発電用に中国南部へ供給
 丸紅はベトナム産の発電用石炭を中国南部に供給する。ベトナム石炭鉱物資源公社が生産する100万トンを広西壮族自治区の欽州市に建設中の石炭受け入れ施設に海上輸送する。2006年度に100万トンを出荷し、2007年に200万トン、2008〜15年には年300万〜500万トンまで引き上げる。同公社はこれまでも中国へ石炭を年数百万トン陸送しており、海上輸送を加えて供給能力を高める。
ーー(2006年3月10日)
 
(参照サイト):「中国向けベトナム石炭の長期供給契約に関する基本合意の件」(丸紅・ニュースリリース)


 今後、中国における産業基盤(鉄鋼・造船・自動車・化学・建設ーー等々)の成長力次第によっては、地球上の鉱物資源(石油・鉄鉱石など)の採掘量激減に多大な影響を及ぼすことになる。また中国政府の現状における資源政策を見ると、自国内における各種資源の「保存」策とも受け取れなくはない(参照:本欄「大慶石油・ガス田の位置図)、近年の輸入海外原料(石油・鉄鉱石等)への依存が目につく。さし当っての中国産業基盤における将来の需要増加が予想される部門とその規模としては以下のようなものが考えられる(下記の「表」参照)。

 なお、2020年頃における中国のGDP(国内総生産)は最低値でも3,000ドル(最大値で5,000ドル程度)で落ち着くものと思われる。ところで、この2020年時点の中国における産業基盤の生産量が、下記のような数値で長期にわたって推移することは、全地球規模における資源埋蔵量確保という視点からしても好ましいものではない。これらがすべて中国独自において新規需要として賄っていくことは、限られた供給量からしても適切ではない。したがって、これらのうちの何割(希望的可能性としては2〜3割程度註1)かは完成品としての「輸入代替」で賄わざるを得ない事態も当然予測できる。またそのほうが全地球的観点からも望ましいであろう。

 註1:この「2〜3割」という数値のうち、最大値の「3割」(「カッコ」内は代替輸入比率が2割の場合)を各項目に具体的に当てはめると、代替輸入製品としての数量は大概ーー@自動車註1-1が300万台200万台)、A鉄鋼製品註1-2で1億5,000万トン1億トン)、B石油製品註1-3で1億5,000万トン1億トン)ーーなどとなる。なお、造船の完工量はほぼ中国国内で賄えるものといえる。これらの数値は、今後において中国が海外からの原料輸入を需要通りに賄えなかった場合を仮定しての数値となる。ここからいえることは、将来的には中国は意外と大きな製品輸入国となる可能性があるといえることである。例えば、本来なら2005年5月まで期限があった鉄鋼製品の「セーフガード」が、2003年12月に解除された。中国・商務省は表向きは、「鉄鋼貿易の情勢が進展した」と説明しているが、これには日・欧などの大手鉄鋼メーカーとの合弁計画が軌道に乗ったとの思いもあろうが、それよりも中国における自動車生産の急激な進展により、2005年までの鉄鋼製品の輸入禁止事項が実際的に難しくなってきたと解釈するのが自然であろう。)

 (註1-1:2002年度における中国の自動車生産台数は約325万台で、そのうち「ノックダウン」生産用を含めた自動車全体の輸入台数は約12万7,000台で、輸入比率はおよそ4%ほどである。なお、中国における現行の自動車輸入台数はおよそ4%ほどと、現時点における代替輸入品として、20%までを予想することは少し無理があるかもしれない。しかし今後の自動車生産の増大にともなう、自動車用鋼板の供給力次第では、社会経済環境の高度化による代替輸入車の急増(具体的には10%=100万台=前後まで)は十分にあり得る。)

 (
:内外の自動車アナリストによる中国の自動車生産・販売台数の将来における予想値は大方、2010年時点で1,000万台、2020年時点で1,500〜1,700万台と予想している。しかしこの数値は少し誇張し過ぎな感は否めない、とみる。おそらく2004年度における中国の乗用車生産台数は、大方が予想していた台数には届かず、240万〜250万台の範囲内と見られる。また今後の自動車生産・販売についても、これまでのような順調な成長率は期待できず、前年割れの年も当然でてくる。また今後の展開次第では、過去ここ2〜3年が購買のピークであったという結論がでないわけでもない。)

 (
註1-2:2003年度における中国の鉄鋼生産量は1〜11月期でおよそ2億トンを記録、そのうち鉄鋼輸入実績(1〜10月期)は3,105万トンで、輸入比率はおよそ15%ほどである。なお、中国鋼鉄工業協会が2003年10月に公表した2010年度における鉄鋼生産計画では生産能力を3億9,100万トンとしている。))

 (参照):本欄「中国主要鉄鋼メーカーの技術導入状況

 (註1-3:2002年度における中国の原油生産量はおよそ1億7,000万トンほどと見られるが、そのうち原油輸入量は6,940万トン(2003年度における中国の原油輸入量は9,112万トン(註1‐4))と、輸入比率はおよそ40%ほどとなっている。なお、今後の中国における国内原油生産量はよほどの大規模な新規油田の開発でもない限り、現行の1億7,000万トンを維持するのが精一杯とみられる。したがって、今後における原油の輸入比率は国内産出量のおよそ3倍となる。そのうち、石油製品というかたちで1億トン〜1.5億トンが代替輸入品となることを想定している。)

 (参照):本欄「市場経済原理に基づいた原油供給体制

  
  日系の鉄・非鉄企業が開発する鉱山やプラント
 幸いというべきものなのかは疑問符もつくが、わが国の産業構造において鉄鋼・造船・電気・自動車などの製造部門が、安定経済成長(それでも基礎素材の使用量はいまだ膨大なものである)に移行し、さらに業種によっては中国やアジア諸国に製造基盤を移管することによって、日本全体としてみれば、これらの資源供給確保がその分、低減されたことは間違いない。しかし海外移管した単体の各企業では原材料の確保は日本においても世界のどこにおいても変わることはない。

 中国の全産業レベルでの高度成長時代に突入した現在、各企業は言うに及ばず、各国単位あるいは中国などでは各地域単位での、資源供給確保に向けての産業立地づくりへと移行していくものと見られる。中国など発展途上国に産業基盤を移管する立地条件として、これまでの「人件費の安さ」などの条件から、安定した「電力供給」や「給水」、さらには基礎資源の自給体制が比較的整えられた地域が、産業最適地として再認識される時代が到来するやもしれない


原発産業

広東省・電力


 (参照):本欄「中国の原料加工産業の動向

 (参照):本欄「
原料炭・鉄鉱石価格交渉」(2005〜08年・最新

 (参照):本欄「
中国における各種産業基盤の需要予測

 (参照):本欄「ニッケル・亜鉛・銅などのレアメタル
          
≪非鉄各社、自前のプラントや鉱山確保≫

 (参照):本欄「今後の資源問題≪ニッケル・亜鉛・銅などのレアメタル


  
中国・アスベスト対策】 
   

  
(参照サイト)
  :「
(中国)遅れるアスベスト対策
(「中国情報局」、2005/08/03)


 (参照):本欄「【提言】中国・東北地方こそ、経済発展の原動力

 (参照):本欄「
ベトナムの交通・運輸・産業インフラ整備状況
          ー製造業にとって、中国の次期有力代替地(国)ー

 (参照):本欄「
基礎資源の自給体制が優劣を決する

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