-

 重化学工業への高度な集約化

 「世界の工場」として、発展目覚しい中国にあって、広大な電気・電子部品製造拠点の集積がすすむ珠江・長江デルタに比べ、近年「輸出生産拠点」としての遼寧省・大連地区は、これら部品製造集積の立ち遅れが指摘されている。しかし、中国東北のこの地域は、他の地域と異なる根本的な産業構造を有している。それは、豊富な地下資源(鉄・非鉄金属・原油・石炭など)と、農業生産基地としての存在である。たしかに、これらは不良資産や大量レイオフ(一時帰休)の元凶ともなっている「国営企業」の、いわゆる「東北現象」をもたらしているのも事実である。

 この危機的状況を脱して、東北地域が発展していくためには、この地域が本来もつ比較優位な産業(しかしそれは同時に、経済活動の低迷のもとにもなっている)−−すなわち、重化学工業の外資導入による再編・統合などの効率化によって、成長軌道に乗せていくしか道はないと思われる。

 ここでの中国東北地域とは、河北省、遼寧省、吉林省、黒龍江省をいう。その主な産業構成は、

 
@ 河北省: 自動車・機械・石油化学・ハイテク機器(含、ソフト開発)
 
A 遼寧省: 鉄鋼・機械・石油化学・石炭
 
B 吉林省: 自動車・石油化学・電力
 
C 黒龍江省: 大型機械・発電機・石炭

 −−などがある。
 
(参照):本欄「天津経済技術開発区概要
 (参照):本欄「
丹東市「鴨緑江」沿岸開発区構想
 (参照):本欄「
遼寧省の各種行政地図(高速道路網等)」 

 ところで、今後の中国の産業配置を考えるうえで、指摘できることが一つある。それは、経済分野においては、中央の統制が弱体化し、地方独自の経済運営がより一層強化されることである
(この傾向は、次期中国首脳(第四世代)体制への移行により、より顕著になると見られる)。それはある意味で、各省・市などの自治体独自の生き残りをかけた、国内外からの産業誘致活動の展開が計られることを意味する。このことは、資源の再配分についても、同様なこととなるであろう

 その大きな根拠の一つとなるのが、鉄道・道路などを利用した輸送上の非効率とコスト高が、今後、各自治体・産業界にとって、国際競争力ある産業構造を確立していくうえで、真剣に取り組んでいかなければならない要素となるからである(
下記の表参照)。それは、地下資源の集積する山元(東北、中・西部)地域と産業基盤の集積する東部・南部地域という、二つの大きな産業形態を異にする、地域に分割され、資源と産業分布の最適配置がすすめられることを意味する註1

 
註1:たとえば、近年における中国の電力供給不足であるが、その要因としてはーー中央政府による電力需給の見誤りもあるが、本質的には市場経済に移行したことによる弊害ーーすなわち資源の供給地である山元(東北3省や山西省など)から需要地である東部・南部沿海地域への鉄道等による輸送力の低下とシステムの限界からもたらされている。と同時に今後、懸念される動きとして、中国全体として地域主義が蔓延り、資源の需給にも弊害がもとらされることである。おそらく、浙江省や江蘇省・福建省などの東部沿海地域や広東省などの南部沿海地域への電力用石炭の供給は、今後ますます難しくなることが予想され、同地域などでは電力用の輸入石炭の需要が増えると見られる(註2

 (註2:福建省の2004年上半期(1〜6月)における石炭輸入量は70万トン(前年同期比2.9倍)となった。特に、石炭を輸入しているのは国有企業が中心で、省全体の輸入総額の85%を占めている。)

 具体的な例としては、石油・石炭・天然ガスあるいは鉄鉱石などがあげられる。それは石油のように、国内の生産量が減少傾向にあることにもよるが、基本的には、国内の物流機能の低下に起因する。例えば、鉄道部門では貨物輸送の40%が石炭、35%が石油・鉄鋼・セメントなど、さらに20%近くが穀物などの農産物で占められている(とくに東北地域の資源を鉄道輸送する場合は、「北京ー秦皇島ー瀋陽」間が最も隘路となる)。したがって、その他の貨物を輸送する余力は余りなく、このことは、「人の移動」(人流)についてもいえる(現在、「瀋陽〜秦皇島」間の旅客専用路線が建設中である=〔参照:本欄北京ー上海高速鉄道ルート(「北京〜瀋陽」旅客専用線〕)

 したがって、長江デルタあるいは珠江デルタ地域などの沿海部においては、海外からの安価な石油・液化天然ガス(LNG)などを輸入したほうが、産業効率やコスト面からも有利となる。また原油については、長期的には国内埋蔵量の保存にもつながる(参照:「市場経済原理に基づいた原油供給体制」)。

    石炭の露天掘り(撫順市)
 中国政府はこれまで、国内雇用の確保のため、年率経済成長7〜8%を堅持してきた。それは、民間部門の成長率が伸び悩む場合には、大量の国債発行をともなう社会資本投資(道路や鉄道などの公共投資)によって埋め合わせてきた。しかし、この10年間で、ある程度の公共部門(道路・鉄道・港湾・空港など)の整備は達成してきた。

 したがって、今後は長期的に雇用確保に役立つ産業基盤整備に重点的投資を向ける必要がある。すなわち、道路や鉄道整備などの公共事業は雇用には速効性はあるが、具体的な産業基盤形成(もちろん、高速道路による直接・間接の経済効果は生ずる)には弱い。

 今後の方向性としては、鉄鋼・石油化学・造船・自動車などの雇用をともなった、実態経済に直接的な影響を及ぼす産業創出分野に集中的に投資することが、中国経済のより一層の発展をもたらすものと確信する。その意味でも、中国東北地域のもつ潜在的要素である、重化学工業への外資による技術導入は欠かせべからざるものとなるであろう。


   (参照):本欄「中国の産業高度化がもたらす資源争奪時代
        ー産業最適地の条件、基礎資源の自給可能地域へー




 【遼寧省の将来開発計画】

 ≪大連港、大規模拡張計画実施≫

 中国の大連市は大規模な港湾整備計画を進める。2007年までに市東部の大窯湾にコンテナヤードや自動車、石油化学などの専用施設を設け、貨物取扱量を現在の1.8倍の2億トンに拡大する。今回の大連港拡張工事の全工事総投資額は約270億元。5年後を目処に、大連港は国内最大・最先端の輸入原油埠頭、輸入鉱石埠頭、コンテナ埠頭を含む超大型現代化埠頭群を擁することになる。大連港重点工事の建設は大連市の「グレート大連」を目指す建設のテンポを加速させ、東北地区経済の越境式発展の加速に貢献することになる。

 大連港重点工事は以下の通りである。 (写真参照)

 @ 30万トン級原油埠頭工事
 A 25万トン級鉱石埠頭工事
 B 6×10万立方原油ストックタンク区工事
 C 新港湾総体拡張工事

 大窯湾二期工事
 @ 国際物流園区工事及び総合物流ビル工事

 このうち、専用施設としては、@自動車A石油化学B食糧C鉱産物ーーなど、東北三省の生産・物流基地とする。30万トン級の大型タンカーや石炭ばら積み船が停泊できるバースを2004年夏までに完成させ、大型の石油化学工場を建設する。コンテナヤードは2007年までに、現代の5倍にあたる年間700万TEUを扱える規模にする。

 :大連新港と大連石化分公司を結ぶ石油輸送パイプラインである「新大線」(全長42km)が、2003年の年内にも着工、2004年5月の操業開始を目指す。ここでの原油は、主に中ロ原油パイプラインが供給する石油を精製する計画だが、中ロ原油パイプライン・プロジェクトの先行きが不透明なため、原油荷揚げ埠頭を生かし、大型タンカーとパイプラインの結合による原油輸送を構築する。年間輸送能力は1,500万トン。)




 
東北振興の事業、第1弾は610億元投資
 中国政府は東北振興の第1弾として、投資総額610億元に上る100件の事業を認可した。そのうち、遼寧省での事業が52件と半分以上を占め、投資額も440億元以上と全体の73%に達する。残る48件は吉林省と黒竜江省でそれぞれ約半分。都市別では大連での事業が17件で最も多い。設備製造業・原材料工業・農産物加工業の事業が中心で、遼寧省では造船大手3社や大連石化、中国石油遼陽石化、鞍山鋼鉄、本渓鋼鉄などの事業が含まれる。資金は銀行融資を利用するほか、企業自身で調達したり、外資を導入する。引き続き、第2弾の対象事業を認可する見通し。ーー(2003年11月)

 
国務院:「東北室」設立で「東北振興」計画加速
 
中国国務院は「東北振興」の推進を図るため、「東北地区等従来工業基地調整改造工作指導グループ事務室」(東北室)を設立する。「東北振興」プロジェクトは、投資総額610億元、100項目に及ぶ第1期工程が終了し、現在は第2期工程の開始に向けその内容を固めている段階。国家発展・改革委員会(国家発改委)も各項目に関する資料の審査をほぼ終えている。第1期工程では、企業による建設項目の申請数が少なかったが、第2期工程では、中国共産党の「第16期中央委員会・第3次全体会議」(第16期3中全会)において、「東北振興」を重要視する姿勢が明確にされたことから、申請数が大きく伸びた。これらに対応するため、独立した管理監督機関の必要性が生じた。国務院は「西部地区開発指導グループ事務室」を参考にし、内部に政策研究、体制刷新にあたる「総合グループ」、「工業規格グループ」、「関連産業調整グループ」の3部門を設置、発改委に所属する機関として置かれる予定。新しい建設プロジェクトと中国経済の発展モデルとして期待されている。ーー(「中国情報局」、2003年11月29日)


Home

-




(C) International Highway Construction Corp.,
Committee for Promotion of International Highway Project   Northeast Asian Development Forum

IHCC Web Library のご利用について  (著作権・リンク・免責事項等)