"反日感情"という思いがけない伏兵
ー安易な「部分受注」は補償を伴うー
「世論」の動向に敏感な中国政府、分割案を採用


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 (※下記の掲載は中国における新幹線導入が本格的に始まろうとした時期(2003年8月)に起きた内容を元に書かれたものです。今日(2007年)の日中間における "友好促進" を推し進めようとする時とは多少趣が異なっています。参考程度に。)


 順調に進むかと思われた中国高速鉄道(北京〜上海)建設における新幹線方式の受注活動であるが、ここにきて思いがけない伏兵が待ち構えていた。それは、中国側の"反日感情 "からくる「新幹線の採用に反対する」署名活動が、インターネット上で始まったという報道である。この"反日感情 "による新幹線方式の受注競争を断念した苦い経験がある。それは韓国高速鉄道の受注時における韓国側(政府・国民)の強烈な"反日感情 "から、受注を断念したことがかつてあったことである

 :韓国における高速鉄道導入時の "反日感情" は、国民はもとより韓国政府自体が強く抱いていた上、高速鉄道に対する戦略上の認識が当時から明確にあったそれは、「ユーラシア大陸の東(韓国)と西(フランス)を抑える」という地政学的な戦略である。これにより韓国政府は当初より、日本の新幹線導入には目もくれなかった。と同時にほぼフランス一辺倒であった。しかし結果的には、この韓国側の判断が「日本の新幹線技術の流出」をくい止め、現状における旧式の「仏・TGV」の車輌導入をもたらし、諸般の弊害をもたらしたことは本サイトでも指摘の通りである。)

 
【記】 「頭(フランス)と尻尾(韓国)はくれてやれ」ーーというが、しっかりと「中身」(中国・インド)とヒレ(東南アジア」−−は取っていきたい。

 (参照):「韓国高速鉄道(KTX)2004年4月 正式開業


 今回の中国高速鉄道受注のケースで、この"反日感情 "という変数がどのような作用をもたらすかは現時点では定かではない(註1)(少なくとも、政府レベルでは、"反日感情 "というものは、それほどみられない。この点はかつての韓国の場合とは異なる)。しかし今後の反対運動の展開次第では、かなりのインパクトを与えることは、先例(韓国高速鉄道の受注競争)を見るまでもない。自国民がどんなに優れた技術であると誇示したところで、それを受け入れる側の国民が拒否反応を示したのでは、何事もよい方向へは進まない。

 いずれにしても日本の新幹線方式が、アジア諸国で受け入れられるための、第二の難関である"反日感情 "というものを、この中国高速鉄道においても克服しなければならないことが、図らずも証明されたかたちである。ここしばらくは、「技術論」よりも、「感情論」が大きくクローズアップされてくることは間違いないようだ(註2)


 【解説】 ものの譬えに、「残り物に福がある」「損して徳取れ」などーー古来から数々の格言めいた戒めがある。まさにこの中国高速鉄道(北京〜上海)の受注競争にもピッタリと当てはまるような昨今の展開となってきた。そのなかでも今後、特に注意を要するのが、この「反日感情」からくる国民的な反対運動である。この「反対運動」と中国側の意向である高速鉄道技術の部分採用とが決定された場合、答えは自ずとでてくる。それは「二の一を狙え」である。

 すなわち、「北京〜上海」間の高速鉄道はフランスなりドイツの車輛に譲ることである。そして彼等の技術的な「お手並みを拝見する」のも一つの方策となろう。そのよい先例が、フランス製の「韓国高速鉄道」であり、ドイツ製の「上海リニア」といえる。確かに、今般の「北京〜上海」高速鉄道は、今後の中国高速鉄道の全国展開を図るうえでこの上なく重要な要素をもっているといえる。しかしそれは同時に裏を返せば、「一度失敗すれば」、再び信頼を取り戻すのが大変難しいことをも意味する。広大な中国に関していえば、高速鉄道の最適地は、「北京〜上海」間のほかにも幾つかある真の「パートナー」(高速鉄道=「新幹線」(「BOT」も含め)方式=導入エリア(省・市))とのめぐり合わせもときの運であろう。何事も人為では図り得ないのが「世の常」である。

                                 ≪2003年8月 記≫

 (※このように掲載した翌年(2004年)、中国における在来線の高速化が奇しくも本格的にスタートした。)

 (参照):本欄「中国高速鉄道、2004年度の動向


 【補償問題】 中国高速鉄道についてはその性質上、車輛等に何らかの事故・故障などが発生する可能性があるが、その補償問題が当然浮上してくる。たとえば、今回のドイツ製の「上海リニア」で、ケーブルの接続部分が高熱で破損する技術的な問題が発生したが、ドイツ側は今後の高速鉄道受注もあり、中国側の要求に応じ、約3,000万ユーロ(約40億円)相当の交換工事を無償で行うことに同意している。中国側が提示する安易な「部分受注」(軌道・信号・車輛など)による新幹線走行には危険が伴う。この面からも慎重な検討が要する。)



 
註1:中国の週刊紙「財経時報」(2003年8月16付)は、黒竜江省で起きた旧日本軍の遺棄毒ガスによる事故について、中国人の反日感情を高め、日本の新幹線技術の採用が有力視されていた高速鉄道計画の受注の行方に影響を与えるとの見方を示した。同紙は日・独・仏と中国を合わせた混合技術となる可能性があるとの見方を示した。)

 (
註2:英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版、2003年8月13日付)によると、中国政府は「北京〜上海」間の高速鉄道計画で、契約を複数部分に分割する方式を検討している。中国案は鉄道敷設や車両製造などを部分契約に切り分けて、競合しているドイツ・日本・フランスの企業と地元企業に発注するという。どの国にも依存せず、中国が鉄道計画の主導権を握り、技術移転を進めることができるとしている。中国にとって分割方式は、高額なプロジェクトを日本に渡したとの批判を避ける上で政治的にも都合が良い。)



 
【註】 中国の在来線鉄道の高速化に伴う車輌選定が2004年8月、日本の新幹線、フランスの「TGV」、カナダのボンバルディアなどに決定された報道が流れるや、例のごとく中国のサイトで、日本の新幹線車輌導入に反対する署名運動が始まった。しかし今回の動きにはさしもの中国政府も重い腰を上げ、「反日サイト」の閉鎖を敢行したもようだ。どこまで効果があるかは定かではないが、中国政府の強い意思と見られる。流れは徐々にではあるが変わりつつあるのであろうか。

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