ロシアが羅津港までの鉄道を整備
狙いは、羅津港・先鋒港の石油施設
今回、ロシアと北朝鮮との間で結ばれた、羅津港とシベリア鉄道を連結させる鉄道の北朝鮮国内部分の修復化計画では、ロシア側のボストチヌイ港の貨物を羅津港に分散させる計画という。ロシア側の調査によれば、北朝鮮内の鉄道事情は劣悪で、大半の区間の線路を交換しなければならない状況。現在、シベリア横断鉄道(STR)のバラノフスカヤ駅から、北朝鮮との国境都市・ハサンまでの240km区間の線路補修工事はすでに完了している。
今後注目される点は、このシベリア横断鉄道(STR)を北朝鮮の羅津港(写真参照:本欄「羅津港の港湾状況」)まで延伸させることの真意である。もちろん、この区間は従来からロシアの広軌と北朝鮮の国際標準軌が清津港まで敷設されている(写真参照:本欄「豆満江周辺の鉄道軌道」)。しかし問題は、軌道施設の老朽化と、中国・ロシア双方による自国の輸出物資は自国領港湾(中国側:大連港、ロシア側:ザルビノ港・ボストチヌイ港)を利用する政策によって、北朝鮮の港湾を使うことは敬遠されてきた。これを今回、ロシア側が港湾を含めて整備するという。
今後のロシア・極東地域における戦略輸出物資は、当然、@原油とA石炭・鉄鉱石ーーということになる。そのうち、@の原油については、東シベリアの原油をパイプラインで太平洋(ナホトカ)へと輸送する案がほぼ政府内では決定している。しかしこの案の実現はこの先いつになるか、現時点では定かではない。そのため、ロシアとしては当座の策として、@中国A太平洋への原油の輸送はシベリア鉄道を利用した輸送に重点を置いている(右記の図参照)。
(註:一部報道では、ロシア政府は東シベリアの原油を当座、バイカル湖の北側を通る「バイカル・アムール」鉄道(バム鉄道)を利用して、パイプラインに先行して輸送する計画を検討しているという。その場合、太平洋側に位置する最寄の原油積み出し港は「ワニノ」となる。この辺りの港湾施設となると、冬場の作業が問題となる可能性がでてくる。しかし手前のコムソモリスクから支線でハバロフスクを経由して、ウラジオストク周辺の港湾まで出てくることもできる=参照:本欄「北東アジア貿易回廊」(社)北陸建設弘済会より)
当然、今回のロシア側の措置は、将来における朝鮮半島縦断鉄道(TKR)の北朝鮮内を走る東海線との連結を念頭に入れていることは間違いない。しかしこの構想にも、@果たしてどれだけの需要があるかA北朝鮮国内の軌道施設の整備ーーなど、実現化には程遠い。したがって、今回のロシア側の措置は、ロシアの輸出物資の分散としての北朝鮮・羅津港の整備と見るのが理に適っている。その一つの物資として、ロシア・極東で産出される「石炭(註1)」(今後の開発次第では鉄鉱石も有望)が考えられる。また「原油」については将来的には、羅津港より南部にある先鋒港まで延伸すれば、北朝鮮でも唯一の原油精製施設である@勝利石油コンビナート(稼働率はかなり低下している)やA先鋒港の湾内には、3kmほど先には20万トン級の原油タンカーを停泊させて、原油の積み下ろしができる「シーバース」がある(写真参照:本欄「先鋒港周辺の石油関連施設」)。将来的にはこの「シーバース」からのロシア産原油の輸出も可能となる。
(註1:三井物産はロシア東部のサハ共和国で石炭生産事業に参加する。ロシアの資源会社エブラズ・グループ(モスクワ)が開発中のデニソフスカヤ探鉱に30%出資する。三井物産の投融資額は8000万ドル。2006年後半から製鉄会社向けの原料炭を生産、08年に原料炭を年間240万トンを生産する予定、全量を日本やアジアに販売する。一般炭120万トンも生産し、ロシア国内の電力会社に販売する。ーー2005年9月)
これまで、何度か浮上しては断ち切れになってきた、「豆満江」開発計画ではあるが、今回のロシア側の積極策によって、再度浮上のきっかけになる可能性は否定できない。
(参照):本欄「【解説】朝鮮半島南北縦断鉄道の現状と課題」
(参照):本欄「豆満江地域の鉄道網」
(参照):本欄「ユーコス破綻後の中ロ間における石油輸送」
(参照サイト):「ロシア、北朝鮮への石油供給を再開する可能性も」
(韓国「東亜日報」、2005年3月23日)
(註:なお、北朝鮮の同地域における現場写真等は都合により割愛させて頂きました。)
≪南北統一後をにらみ≫
中韓両国が対北資源戦略展開
【北朝鮮資源開発】
●韓国公社、北朝鮮で鉄鉱石鉱山開発へ・中国と共同
韓国政府系機関の大韓鉱業振興公社が北朝鮮最大の鉄鉱石鉱山の開発に中国と共同で乗り出す。同公社関係者が5月24日明らかにした。大韓鉱業振興公社関係者らが近く訪朝し、事業規模など開発計画をめぐり協議する。対象は中朝国境に近い北朝鮮北部の咸鏡北道・茂山の鉄鉱山。韓国エネルギー研究院の資料によると、北朝鮮金属機械部鉱産課が所有しており、2003年末時点の鉄鉱石確認埋蔵量は22億トン。推定分を含めると30億トンに達する。ただ、電力不足や外貨不足により最近の生産量は年間300万トンにすぎない。同公社は茂山鉄鉱山に6カ所の採掘場を段階的に建設する事業に中国企業と合弁で投資する。投資額は生産した鉱物で償還する条件だという。ーー(出所:「日本経済新聞」、2005年5月24日)
【関連1】 韓国・大韓鉱業振興公社、中国合弁企業と鉄鉱石採掘
韓国の大韓鉱業振興公社は、中国の民族経済開発総公司(黒竜江省)と合弁で、北朝鮮の平安北道・徳★(山+見)で鉄鉱石採掘を2006年上半期中に開始する。機材は中韓から持ち込み、北朝鮮は鉄鉱石を現物提供する。出資比率は韓国側が60%、中国側が40%。
【関連2】 南北合弁の黒鉛鉱山生産をスタート
南北が初めて合弁で開発した北朝鮮の黒鉛鉱山がこのほど生産を開始した。下半期(1〜7月)から韓国に搬入する。大韓鉱業振興公社は2006年4月27日、黄海南道延安郡で北朝鮮のミョンジ総会社と合弁開発した黒鉛鉱山の竣工式を行った。同鉱山は埋蔵量が約625万トンで、生産量は年間3,000トン。公社側は今後15年間、毎年1,830トンを韓国側に搬入する計画だ。これは国内の黒鉛需要の20%に当たる量。南北は2002年3月に鉱山の共同開発で合意。04年3月から開発を行ってきた。総投資額は1,020万米ドルで、双方が折半で現物投資した。鉱業振興公社はまた、中国・黒竜江省の民族経済開発総公社と合弁で平安北道・義州郡の鉄鉱開発なども推進する計画。
■平壌事務所を検討
韓国・鉱業振興公社は2006年4月30日、北朝鮮との資源開発協力をさらに進めるため、平壌事務所の開設を検討中と明らかにした。すでに北朝鮮側にも伝えたという。これに先立つ4月28日には、平壌空港で北朝鮮の民族経済協力連合会と、資源開発で協力する内容の合意書を交わしていた。
(参照):本欄「北朝鮮の地下資源分布状況」
■中国・北朝鮮、金・銅・モリブデン鉱山開発へ
中国有色鉱業集団有限公司(有色集団)は、吉林昊融有色金属集団有限公司(昊融集団)と北朝鮮の金剛総公司との間で、北朝鮮国内における金属鉱山の開発で協力して進めていくことを盛り込んだ協定を結んだ。協定によると有色集団は金剛総公司と合弁会社を設立し、金、銅、モリブデンなどの鉱山開発に当たる。また有色集団と昊融集団は北朝鮮での金鉱開発で協力することも明記された。ーー(2006年4月)
●中国3企業、北朝鮮・茂山鉄鉱山50年開発権を取得
中国企業が北朝鮮の茂山鉄鉱開発権を取得した。茂山鉱山の鉄鉱石埋蔵量は30億トン、可採埋蔵量は13億トンと推定される。今後50年間、茂山鉄鉱を開発できる権利を獲得した中国企業は、通化鉄鋼グループ、延辺天池公社、中鋼グループなど吉林省の3企業。このうち中鋼グループは中国最大国営鉄鉱石輸出入会社である。中国側が電気・機械設備・技術を提供し、合作で開発される。中国3企業はこのために最低70億元(約1,000億円)を投資する計画。このうち50億元は鉱山開発自体に投入され、20億元は吉林省通化から茂山に達する鉄道や道路など輸送施設建設に使われる予定。中国企業はこの鉱山から毎年1,000万トンの鉄鉱石を採掘する計画。このほか、北朝鮮最大無煙炭鉱山の龍登炭鉱が中国の非鉄金属大企業の五鉱グループと合作会社を設立することで合意。龍登鉱山では1日100万トンほどの無煙炭を生産、中国に供給する。ーー(香港「亜洲週刊」、2005年10月2日)
●中国・琿春市、北朝鮮・羅津港の経営権を取得
吉林省琿春市国境経済協力区管理委員会によると、北朝鮮は羅先市元庁里通商区から羅津港までの道路建設と引換えに、羅津港の50年間にわたる単独経営権を琿春市に譲渡した2005年9月19日)。またその他に、5〜10km2にわたる工業園の建設も許可された。ーー(2005年9月)
◆韓国、北朝鮮・ロシア間の鉄道補修に参加
北朝鮮・咸鏡北道の羅津港とロシア極東を結ぶ鉄道(55km区間)の補修工事に、韓国が参加する。2006年3月17日、韓国鉄道公社と北朝鮮、ロシアの当局者がウラジオストクで会談し、合意した。鉄道公社の関係者が明らかにした。北朝鮮とロシアは2004年7月に開いた鉄道実務者会議で、老朽化した同区間の改・補修で合意したものの、財源問題で作業を始められない状態が続いていた。韓国の参加で、財源にはメドがついたことになる。同区間はロシア方式の「広軌」と北朝鮮方式の「狭軌」の線路が敷かれており、補修には1〜2年かかる見込み。ロシア・ナホトカのボストーチヌイ港は現在、欧州行きの東北アジア貨物で飽和状態となっている。鉄道の補修が完了すれば、これらの貨物が羅津港に移ってくる可能性もある。また、核問題でこう着状態にあった朝鮮半島縦断鉄道(TKR)とシベリア横断鉄道(TSR)の連結にも弾みがつくと期待される。ーー(2006年3月)
(参照):本欄「豆満江流域の鉄道網」
≪ロシア・シベリア鉄道〜北朝鮮・豆満江、羅津≫
【中韓の資源戦略】
●「中国の対北朝鮮投資の意図とは?」(韓国「朝鮮日報」)
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