-

 ≪アジアとの結節点、九州地域の役割


 工場立地の最適化変遷には、「ここだ」という、長期最適地というものはなかなか築き得るものではない。それは電気・家電産業でいえば、かつては日本からアジアNIESへ、さらには東南アジア、そして現在では中国沿海部地域へと確実に移行してきた。それは常に「低コスト」化という、産業構造の宿命を抱えながらの変遷である。そして今日、その最終・究極的な最適地と目されていた中国沿海地域にも、SARS(新型肺炎)という名の病魔によって、企業立地最適化が岐路に立たされようとしているのも現実である。それは生産の高度な「集約化」に代表される遠因からつくりだされた、重大な危機(すなわち、大規模工場の丸ごと閉鎖、また最近では、「中国元」の切り上げリスクが指摘されている)−−に直面するやもしれない、という内容をはらんでいる。

 
この危機的な要因の打開策は「集約」の反対、すなわち生産の「分散」(危機の分散)を意味する。このことはアジア地域、とりわけ中国大陸に最も近い九州地域の産業立地において、ひときわ高いインセンティブを今後与えることになる。それは、半導体や自動車部品を中核とした部品の生産・供給地として、さらにはそれら部品を基盤とした家電や自動車の完成品の輸出拠点としての機能が高められることへの期待である(註1。今まで、人件費の安さという視点から、中国に向かっていた産業立地であったが、製造の機械化(ロボット化)により、まずは低級品からの国内生産への回帰が起ころうとしている。わが国産業界の「生き残り」の道は、より高い付加価値製品の製造と、低級品製造の「機械化」(ロボット化(註2)にあるといえる。
 (参照サイト):「九州の工業立地情報(九州の概況)、九州経済産業局HP

 註1:2003年度の九州地域の全産業設備投資計画は前年度比0.7%増と、3年ぶりにプラスに転じる。九州は国内でも比較的土地代や人件費が安いといわれ、今後半導体やプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)を用いた薄型テレビ、また自動車産業の集積が進む地域として注目される(註1-2)。)

 (
註2キヤノンは工場組み立てラインの完全自動化を柱とする国内生産の抜本改革に着手する。2007年末までにまず、国内生産額(約1兆円)の25%に相当する組み立て工程を無人化し、生産性の大幅向上を狙う。中国などに対抗、中長期的に国内生産を維持する体制を構築する。製造業の組み立て工程無人化は世界的にも異例。工場の自動化が新たな段階に入る動きとして内外製造業の強い関心を集めそうだーー2004年11月22日

 【記】 トヨタは中国向け完成車の輸出を博多港に集約することを決定した。具体的には、日本国内で生産される全ての中国向け完成車を博多港・香椎パークポート内写真参照)の拠点に集約。中国の4ヵ所(大連、天津、上海、広州)の港湾へ輸出する。2006年第1四半期に開始し、初年度は約2万台の輸出を予定している。今回の集約により2006年第1四半期以降、トヨタの海外への完成車の輸出拠点は、名古屋港・豊橋港・博多港の3港となる。

 
(参照):本欄「ベトナムの工業化、中国華南地域との連携

日本各地の産業都市を紹介 !!

日本各地、掘り起こせばまだ有望な産業開発区はある

苫小牧西・東部工業団地の開発進捗状況
   −21世紀の新たな産業開発拠点ー
    ≪千歳・苫小牧開発エリア≫

「日本再生プロジェクトー地方各地の経済産業育成へ」
  ≪東北地域・特集≫ トヨタ自動車グループ

近未来都市・有明地区(ユリカモメ沿線)

東京・首都圏の交通網整備計画
  ≪外郭環状道路・圏央道)≫

地方都市で脚光を浴びる "ライト・レール"
   ー富山県・富山市ー

大田区産業プラザ(財団法人大田区産業振興協会)

        ≪企画・構成:アジアインフラストラクチャー総合研究所≫



中小企業ネットワークソサェティ(法人会員)
お問合せ:法人会員募集(アジアインフラストラクチャー総合研究所)

.




 
九州エリアの中でも、北部九州の産業立地に最適な要素として挙げられるのが自然災害、なかでもわが国特有の大規模地震が比較的に他の地域と比べ、少ないことである(参照:「地震危険度分布状況」、東京大学出版会。このことは半導体やコンピュータなど高度な集積技術を要する産業には適している。いずれにしても、大規模地震からの被害をより軽減するためには、基幹設備の耐震性や免震性()を高めた、工場などの諸施設を建てる必要がある。特に、大規模地震の場合、地域によって地震周期が異なるが、早いもので30〜40年周期(しかし地域〔宮城県沖地震〕によっては20年前後もある)であり、常に磐石な建物に更新していくことも備えとなる。

 
:鹿島は液晶パネルや半導体などの電子デバイス工場向けに地震リスクを大幅に軽減できる「多層階免震工場」を開発した。これにより地震の大きさを1/3から1/10に縮減できる。免震装置のコストアップ分は、建物や生産装置などを含めた初期投資額の1%程度、生産装置を除いた総建設コストでも2〜3%で済むという。)

 (
:シャープは亀山工場に新設する液晶パネル第2工場の制震対策を強化する。震度7の地震に見舞われたとしても操業を1日程度で復旧することを目指す。2004年9月に起きた震度4の地震では、ガラス基板が2枚割れ、点検のためラインを約1時間止めた。)


 福岡県西方沖地震、工場施設に及ぼす影響は軽微

 九州北部で、およそ100年ぶりにM7クラスの地震発生
 3月20日午前10時53分ごろ、福岡県と佐賀県南部で震度6弱の地震があった。震源地は福岡県西方沖で、震源は極めて浅い。マグニチュード(M)は7.0と推定される。気象庁によると、福岡県筑豊、築後、佐賀県北部、長崎県壱岐で震度5強を記録するなど広範囲で地震を観測した。九州北部を震源とした地震でM6を超えるのは、1898年8月に福岡県北西部糸島半島でM6.0の地震が記録されて以来。M7クラスの地震は、ほとんど記録がない。福岡県日本海沿岸、長崎県の壱岐・対馬に津波注意報が出た。ーー(2005年3月20日)

 (参照):本欄「
日本周辺の活断層地震分布図(西日本地域)

 
半導体・自動車工場、地震で操業に支障なし
 九州は「シリコンアイランド」と呼ばれるほど半導体メーカーの製造拠点が林立しており、九州北部の地震で関連企業工場などへの影響が懸念されたが、3月20日夕までに各社の本社に入った情報では、大きな被害は報告されていない。長崎、熊本県などに半導体工場を持つソニーグループでは「ガラスが若干割れた程度で、操業に支障はない」(ソニー広報センター)。福岡県内に半導体工場がある三菱電機や、北九州市などに同工場を持つ東芝も、設備損傷など大きな被害の連絡は入っていない。キヤノンの大分県内の3工場や、三菱重工業の長崎造船所も異常の報告はない。新日本製鉄の八幡製鉄所(北九州市)や三菱化学の黒崎事業所(北九州市)は、地震後にいったん、生産設備などを停止したが、安全確認した後に順次再稼働した。日産自動車の九州工場(福岡県苅田町)は、設備に影響が出たとの連絡はない。日産は「21日は稼働日だが、始業前に設備の点検をした上で、予定通り稼働することになる」(広報)としている。ーー〔共同、2005年3月20日〕

 
福岡県西方沖地震、主要工場相次ぎ操業再開
 福岡県西方沖を震源地とする地震から一夜明けた3月21日、地元工場の多くは稼働を再開したり、休みを終え通常通り操業する動きが相次いだ。懸念された生産への影響は今のところ軽微にとどまるとの見方が多い。主要百貨店も営業を再開した。ただTOTOが計器異常で操業停止するなど影響の全容は明らかになっていないだけに、関係企業は点検徹底を急ぐ。トヨタ自動車九州(福岡県宮田町)、日産自動車九州工場(同苅田町)、ダイハツ工業の生産子会社であるダイハツ車体大分工場(大分県中津市)は大きな被害はなく、21日午前に通常通り操業した。福岡県久留米市など九州北部に三つのタイヤ工場を構えるブリヂストンも生産に支障のある被害はなかった。新日本製鉄の八幡製鉄所(北九州市)は順次生産を再開。住友金属小倉の小倉製鉄所(同)も点検を終え、同日朝に通常操業に戻した。精密設備に高い精度が求められ、微妙なズレも許されない半導体工場は21日も確認作業に追われた。北九州市と大分市に工場をもつ東芝は同日も多様な設備の点検を続けた。「設備も建屋も完全に異常がないと確認した」(広報部)ため、順次稼動させた。NEC九州(熊本市)では、21日にステッパーの大半が稼動を停止したが、その後の点検で被害のないことを確認した。すでに通常操業に戻っている。松下電器産業は情報・通信機器の子会社が福岡県内と佐賀県鳥栖市に工場をもつ。22日朝に被害がないことを確認したうえ操業させる方針。−−(「日本経済新聞」、2005年3月22日))

 
【記】 一時は新潟県中越地震の悪夢を連想したが、地震のマグニチュードの割には工場施設等に及ぼす被災は比較的に軽微であったことは「不幸中の幸い」であったといえる。その要因として、@震源地が福岡市等の直下ではなく、海洋であったこと、A地震の揺れ周期が規模の割には短かったこと、Bこれは憶測だが、北部九州地域(福岡市周辺)が比較的地盤が安定し、強固であるーーなどが考えられる。いづれにしても、重大な被災とならずに済んだ「地の利」を、返す返す感謝する次第である。ーー(IHCC)




 
鳥栖ジャンクション(「福岡県庁」HP) 
 さらに、わが国を取り巻く環境保全の視点からも、国内貨物輸送をトラックから鉄道や内航船舶に切り替える「モーダルシフト」が進行しつつある。それはまさに、アジアへの結節点(ゲートウェイ)となる「九州地域」への物流輸送の集約を意味する参照):本欄「九州最大の要衡、鳥栖インター」)。すなわち、現時点における中国沿海地域への物資輸送を考えた場合、一度九州へ搬送し、そこからアジア各国へ輸出する形態が今後ますます強まるとみられる(註1。その中でも、ひときは重要になってくるのが九州北部の大水深大型コンテナバースの役割である下記の「九州港湾整備状況」参照

 ≪港湾施設の一極集中は諸々のリスクを伴う
 コンテナ取扱の「量」よりも、産業構造の「質」が重要。「モノ」を多く運べばよいという問題ではない !!
地球環境の保全からしても、「完成品」は夫々の市場で生産する時代へ。いつまでも、太平洋を横断する交易はエネルギーと資源の”ロス”

 なお、港湾施設なかんずく大型コンテナ船のわが国からの撤退問題が関心を集めているが、南北に長く、しかも拠点都市が300〜500kmごとに点在しているわが国の特徴から、一ヵ所に500万〜1,000万TEUにも達する収容能力のハブ港湾施設(しかしその一方、東京湾内周辺〔東京・横浜・川崎・千葉など〕のコンテナ取扱量を合計すれば500万TEUは優にある〔参照:「(関東)管内港湾別外貿コンテナ取扱量〕国土交通省)を集中させるのは、大規模地震や陸上部における一層の交通渋滞を招くことや、国内輸送料金の割高などーーからしても問題があるのではないか。この港湾施設の一極集中の弊害は、隣国の韓国・釜山港を見れば一目瞭然である(註2下記の「韓国港湾、最近の動き」参照。国内外の総合的な物流輸送を円滑に進めるためには、陸・海・空のバランスのとれた輸送パフォーマンスが、国内の各主要拠点都市に今後ますます要求されてくることは間違いない。

 日本:国内港湾外貿コンテナ取扱個数、2004年は1,507万TEU

 
国内港湾の外貿コンテナ総取扱個数は2004年(1月〜12月)の速報値ベースで1,507万TEUであることが、国土交通省港湾局の調べで分かった。特に、中枢・中核国際港湾以外の地方港のシェアが拡大しており、国際コンテナ物流の地方分散化傾向が鮮明になりつつある。

 
註1:日中間で初めて直航の定期海上貨物便が2003年11月をめどに就航する。日本通運など4社の共同事業で、「博多(福岡市)〜上海」間を高速船で結ぶ。これに接続すると、例えば「東京〜上海」の輸送期間を現在の半分近い片道4日に短縮できる。中国からの輸入が増えている食品や日系企業の中国工場向け電子部品などの輸送需要を取り込む。日通、住友商事、商船三井、港湾運送大手の上組が共同出資で運航会社「上海スーパーエクスプレス」(福岡市)を設立した。コンテナ船よりも積み下ろし時間が短く移動も高速な「RORO」船を使う。中国政府の認可が下り次第、週2便を運行する。2004年中に、平日は毎日運航する週5便への移行を目指す。また「東京〜博多」間も「RORO」船を週6便運行することで、大消費地の「東京〜上海」間を結ぶ高速輸送網をつくる。これまで、日中間は複数の港を経由する貨物船が主流で、「東京〜上海」間なら片道7日間程度。今回の事業は、二つの港を直航で往復する定期シャトル便で、従来なかった。日通では中国現地でのトラック輸送と組み合わせ、上海周辺の工場に向けた電子部品や機械部品を生産計画に合わせ「ジャスト・イン・タイム」で搬入する計画(参照:「日本通運、中国内の物流網を強化。また、国内は鉄道輸送と組み合わせれば、貨物を鉄道に積み替え、東北・北陸などの遠隔地に輸送することも可能である。ーー「日本経済新聞」、2003年9月18日付・要約

 (
註2:日本通運とJR貨物は2003年11月、日本各地と中国・華東地区を貨物船と鉄道、トラックで結ぶ輸送サービスを始める。この方式によると、輸送費は航空輸送に比べ「10分の1」、輸送期間は「4日」程度になる。このサービスは、日通、住友商事、商船三井、上組の4社が11月から開始する「博多〜上海」間の海上シャトル便(週2便)を活用する。)

 (
註3:日本通運とJR貨物は「博多〜釜山」間に鉄道コンテナ(12フィート、積載重量5トン)を用いた一貫輸送航路を開設する。日本各地からのJR貨物コンテナを博多の貨物ターミナル駅まで鉄道輸送し、そのままフェリーに積み込む。博多を出航し、当日中に釜山に到着。ソウルまでは陸送でも翌日の午前中に到着する。)



   韓国・釜山港「子白台」コンテナ埠頭
  (写真出所:「韓国釜山市港湾局」ホームページ)

 註2:2002年度における釜山港のコンテナ取扱量はおよそ933万TEUにも達する。そのうち、トランシップ・コンテナ(中継コンテナ)は約4割(約373万TEU)ほどと見られる。したがって、残りのおよそ560万TEUが韓国国内の輸出入コンテナ取扱量となる。この560万TEU前後のコンテナがほとんど全量、釜山港を経由して韓国内に搬送されることになる。したがって、韓国内の輸送コスト高は日本国内のコストよりも割高になるのも当然といえる(註2-1。)

 (
註2-1:GDP〔国内総生産〕に占める輸送費割合(2002年度)は、日本が9.59%に対して、韓国は12.8%となっている。また、鉄鋼の「トン当たり」輸送費は日本が14ドルに対して、韓国は15ドルほどである〔なお中国の対GDP比は21.6%=2003年度。その主な要因として、@国内の鉄道網(特に「京釜線」)が旅客と貨物との複合輸送からもたらされる飽和状態のため(参照:本欄「韓国高速鉄道の運行仕様、コスト高な高速道路を利用せざるを得ない。また内航船の運航が進んでいないA釜山地区は、手狭な後背地という地形的なハンディをもつため、税関や検疫所を内陸部の複数地点に設置せざるを得ない。そのため、釜山市街地の交通渋滞の元凶ともなり、労組による労働環境の改善や賃上げ要求などとあいまってコスト上昇圧力(労働スト)がかかりやすいーーなどが考えられる。このように釜山港への港湾施設の一極集中は、国内輸送コストの上昇という国内経済を犠牲にして成り立っているといえる。)

 (参照サイト):「
韓国・釜山港のコンテナ埠頭 (「釜山地方海洋水産所」HP、「Japanese」の欄

   
(参照):本欄「韓国港湾、最近の動き(港湾スト関連) 

.


Home

- 




 (C) International Highway Construction Corp.,
Committee for Promotion of International Highway Project   Northeast Asian Development Forum