【提言】                      
東西を結ぶユーラシア・ランドブリッジ再考
ー中東湾岸危機に対応した代替ルート案ー


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はじめに

 中国・北京を起点として、ユーラシア大陸の東西を結ぶ幹線網(道路・鉄道)には以下の三つのルートが考えられる。

 1)北京から極東・ロシアあるいはモンゴルを経由してシベリア鉄道でヨーロッパに至る(シベリアランドブリッジ=SLB)。

 
:中国の内モンゴル自治区のフフホト市からモンゴル、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツの6カ国を経由して、ドイツのフランクフルト(総延長9,814km、走行日数18日間)までを結ぶ貨物輸送列車が、この度初めて運行された。この貨物列車は100両編成で、中国製の家電製品、紡績品などを積載。年間輸送量は5万トンに達する見込み。ーー2005年3月)

  
(参照):本欄「近年のシベリア鉄道の動き

 2)北京から南下して鄭州さらに昆明あたりからアジア・ハイウェイに連結して東南アジア、西南アジアさらに中近東を経由してヨーロッパに至る(
アジアハイウェイ)。

 3)最後は、北京(連雲港)から鄭州、蘭州さらにウルムチを通り、中央アジアを経由してヨーロッパに至るチャイナランドブリッジ=CLB

 
:中国の内モンゴル自治区のフフホト市からモンゴル、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツの6カ国を経由して、ドイツのフランクフルト(総延長9,814km、走行日数18日間)までを結ぶ貨物輸送列車が、この度初めて運行された。この貨物列車は100両編成で、中国製の家電製品、紡績品などを積載。年間輸送量は5万トンに達する見込み。ーー2005年3月)

 −−などである(註)
 
 :その他の輸送ルートとしては、アフリカ最南端の喜望峰を経由して欧州へと至る、「海上ルート」がある。)
 (
:この中国・連雲港から欧州へ至る輸送ルートは、一般的には「ユーラシアランドブリッジ」といわれている。
    しかしここでは、便宜上、「チャイナランドブリッジ」と呼ぶ。)


 ところで、これらのうちの3番目の「チャイナ・ランドブリッジ」について、その可能性を見てみよう。まず、このルートはすでに、東シナ海に面した連雲港から鉄道が敷設されている、という利点が挙げられる。と同時に、道路についても鉄路に沿ってウルムチまで舗装道路が完工されている。最近、中国政府は旧シルク・ロード地域(ウルムチ〜キルギスタン〜タジキスタン〜ウズベキスタン〜アフガニスタン〜イラン〜トルコ)を横断する新シルク・ロード(道路)建設に関心を示している。これはアフガニスタンの政権安定化ならびに国土復興とともに、従来までの中国〜パキスタン間を通過する難所越えのカラコルム・ハイウェイに代替するヨーロッパ・ルートの開拓を目指しているともいえる。

 すなわち、このルートの利点は従来の連雲港〜アムステルダム間の鉄道による輸送から、最も西域に位置する開発都市・ウルムチを起点として、@カシュガル〜キルギスタン〜アフガニスタン〜イラン〜トルコ、あるいはAカシュガル〜キルギスタン〜タジキスタン〜ウズベキスタン〜トルクメニスタン〜カスピ海横断ーールートなどを利用し、既存のヨーロッパ・ルートに接続できることである。

 しかし、このルートの中で、カシュガル〜キルギスタン間は中国からの分離独立を求めるウイグル系民族が多数住む政情不安定な地域であり、
場合によっては鉄道も敷設されている既存のウルムチ〜アルマアタ(カザフスタン)〜タシケント(ウズベキスタン)を経由して、トラック輸送でアフガニスタン〜イラン〜トルコへ入るルート、さらにはトルクメニスタンとイラン国境まで鉄道で運ぶ[この場合、トルクメニスタン(1,520mm)とイラン国内(1,435mm)との軌間が異なるために、積み替えが必要)ルート、もしくはウズベキスタンを通過し、さらにトルクメニスタンをそのまま鉄道で延伸して、カスピ海ルートに接続したほうが現時点では最善かと思われる。   (参照:UN ESCAP/Trans-Asian Railway Map)

 これらのルートは、シベリア鉄道を利用し、モスクワやワルシャワ経由で東・北欧へ物資を輸送(一時保税も含む)するよりも、トルコ〜南欧・中欧という欧州の大市場に直接物資を輸送できるという利点がある。また、通過する緯度等から勘案しても、冬季の輸送は一部区間(アフガニスタン北部のサラン峠越え(写真参照:「サラン峠のトンネル状況」)を除けば比較的容易かと思われる。   (写真参照:「最近のアフガニスタン・カブール状況」)




ユーラシア・ランドブリッジの動き

(中国・阿拉山口〜カザフスタン・ドルジバ)
中国雑貨の交易、大型トラック輸送が増加傾向




 
▼カザフスタン側検問所(大型トラックの
  通過量もかなり増えてきているようだ)

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992年末に開通したユーラシアランドブリッジ(中国・連雲港〜オランダ・ロッテルダム間)は、中国と中央アジア諸国間を連結することで、同区間はその後大きく物流量を伸ばしている。特に、中国からは衣類・雑貨(テレビなどの家電註1を含む)・食品が輸出され、中央アジアからは原油註2・鉄鋼(鉄屑)・木材などが輸出されている。また近年ではカザフスタン国内でも道路整備が進みつつある註3。なお中国と中央アジア(とりわけカザフスタン)間の交易については、中国からの雑貨類流入の増大につれて、物資輸送の活発化が予想される。これまでこの区間は、ユーラシアランドブリッジによる鉄道輸送が主体であったが、今後は両国間の国境駅(処理システムの関係上、主にカザフスタン側のドルジバ駅註4)での荷役作業の増大から輸送力の限界に近づきつつある註5。したがって、その処理策もあり、大型トラックやトレーラーによる輸送に重点が移っていくものと考えられる。 

 
註1:特に、中国西域〔四川省・成都〕に拠点をもつ「四川長虹集団」のテレビなど家電製品は生産過剰もあり、この中央アジア地域が今後大きな市場として浮上してくるものとみられる。)

 (
註2:この件に関しては、本欄の「中央アジアと中国を結ぶ石油・ガスパイプライン網計画」を参照)

 (
註3:本欄「カザフスタン国内の道路整備状況」を参照)

    
 ▼カザフスタンの鉄道状況         ▼カザフスタンの道路整備状況
  

 (註4:内陸部における国境駅での貨物の積み替え作業は「受け側」で、荷役作業をするのが原則となっている。したがって、中国からのカザフスタンへの貨物は「ドルジバ駅」で、またカザフスタンから中国への貨物は「阿拉山口駅」となる。しかし鉄道輸送に関しては処理システムの関係上、主にカザフスタン側のドルジバ駅での交換作業となるようだ。)

    
▼阿拉山口駅の荷役作業           ▼阿拉山口駅の荷役作業
  

 【阿拉山口駅】 荷役施設としては、内陸交易の国際取り決めにより、貨物の受け取り側が原則的に施設を用意する必要がある。したがって、カザフスタン側からの輸入品目(主に鉄鋼や屑鉄など)の性質上、電磁石クレーンやトラック・クレーンが主体となる。また上記の写真とは別に、強風用の屋内施設(「門型」電磁石クレーン)がある。また「線路」施設はロシアの「広軌」と中国の「標準軌」とが入り込んでいる。しかし列車専用の「台車交換」施設はないようである。したがってこの種の作業は、カザフスタン側の「ドルジバ駅」構内で行うことになる。

 (参照):本欄「カザフスタン・ドルジバ駅の構内施設

 註5:内陸部における鉄道方式による荷役交換システムの最大処理能力は300万トンほどとみられる。なお、2001年度におけるドルジバ駅の貨物取扱量は約380万トンであるが、おそらくトラックによる貨物量も含まれると思われる。一方、中国側の阿拉山口駅における2002年度の貨物取扱量は約584万トンになる。この中には、カザフスタンからの石油輸入も入っている。)

 (
2003年度における中国とカザフスタン間の鉄道貨物輸送量は、752万トン。2004年は920万トンに達する見込み。)

 (
:なお、中国と欧州を結ぶ鉄道がカザフスタン領内で連結する新鉄道〔カザフ領内3,083km〕の建設が2004年から始まる。)

 
(参照):本欄:「【補足】不連続点の問題解決はトラック輸送から

 (参照):本欄「【最悪のシナリオ】:「スエズ運河封鎖事態の一代替案


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