「成都〜上海」間の道路運行状況
この「成都(重慶)〜上海」間の道路、とりわけ高速道路の運行を考える場合、まず頭に浮かぶのが「2,400km」(重慶〜上海間)という、距離の問題である。例えば、東京〜福岡がおよそ1,000kmであり、福岡〜札幌間をしのぐ長さとなる。果たして、これほどの距離をトラックで定期輸送することは、理にかなった選択なのであろうか(註4、5)。
(註4:中国は、全国高速道路網整備の進展によって、今後、観光をはじめとする長距離輸送の需要が大きく増大する見込みである。なかでも、トラック輸送による中西部を起・終点とする輸送は、期待が集まる。したがって今後の焦点は、交通インフラを十分に活用するためにも、輸送媒体であるクルマの側、とりわけ長距離走行に耐えられるトラックやバスのエンジン性能の向上は避けて通れない。)
(註5:トラック輸送の問題点として、@他の輸送機関〔船舶・鉄道〕に比べて運賃が割高、A信頼できる事業会社が少ない、B積荷の取扱が悪く、事故が多いーーなどが挙げられる。)
例えば、重慶に生産拠点を置く日系オートバイメーカーや自動車メーカーの部品供給は、現状では香港経由の鉄道輸送が主流である(参照:本欄「長江流域の鉄道網」)。その場合、一般的には「貴州経由」のルートが設定されている。所要時間は重慶・成都までが5〜6日(実際には7〜12日)程度を要する。このルートの利点としては、@トランジット・タイムは長いが、通関等のトラブルが少ない。A予約が取得しやすく、列車積載が比較的容易である−−などが挙げられる。なお鉄道で、上海から南京・武漢を経由して、重慶まで輸送する場合、5日程度を要する(その場合でも、少なくとも2日ほどの余裕をみる必要がある)。しかしこの場合、定時運行ではなく、随時運行となる。また成都向けはあるが、重慶向けは運行が少ない(参照:本欄「重慶周辺の鉄道連結状況」)。一方、武漢周辺にある繊維関連のメーカーなどでは、上海からの高速道路を利用したトラック輸送が増加している(参照:本欄「日本通運、中国内の物流網を強化」)。したがって、日系荷主企業が長江を利用するものとしては、鉄鋼などのスポット的な荷動きとなる。現状では長江水運の利用は、トランジットタイムが長く、日系企業のニーズに合致していないものといえる(なお、最近の長江流域における船舶航行の動きは本欄「重慶港=九龍坡埠頭」参照)。
武漢と重慶における各種取扱量 (単位:百トン)
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武漢市(1997年(註)) |
重慶(2000年) |
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鉄 道 |
5,000 |
2,900 |
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道 路 |
900 |
21,000 |
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水 運 |
2,200 |
1,400 |
(註:武漢市におけるコンテナ取扱量〔1997年〕は全体で16万TEU(20フィート換算)。
◇そのうち@水運が7万TEU、Aトラックが9万TEU、B鉄道が0.1万TEUである。
◇水運のコンテナ取扱量が比較的多いいが、これは上海からの回送される空コンテナも含まれているものと、見られる。
◇また中国においては、鉄道・道路におけるコンテナ化率はまだ低く、特に内陸部では一層顕著である。 |
長江流域都市の上海からの距離と船舶所要日数
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南 京 |
武 漢 |
重 慶 |
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上海からの距離 |
392km |
1,125km |
2,414km |
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上海からの所要日時 |
2〜3日 |
10〜15日 |
15〜20日 |
上海〜武漢間の輸送日数
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トラック |
水 運 |
鉄 道 |
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36(時間) |
10〜15(日) |
1(週間) |
上海から神戸までの所要日数は直航便で、2〜3日ほどかかる。
したがって、武漢ー(トラック)−上海ー(外航コンテナ船)−神戸間は、およそ5〜6日ほどと見られる。 |
上海ー南京高速道路 武漢長江大橋(武漢市)

〔註:上記の写真をクリックとすると「地図」が掲載されます〕 |
現在この区間は、すでに「上海〜南京」(約400km)区間の高速道路が開通している(参照:本欄「上海〜南京間の高速道路地図」)。さらに、「南京〜武漢」(約650km)区間も、安徽省内では「合肥」までが開通(参照:本欄「南京〜合肥間の高速道路」)。また江西省内では南下して「九江」を経由して「南昌」までが全線開通している。一方、「武漢」からは西進して「荊州」、さらに「宜昌」までが、それぞれ開通している(参照:本欄「長江流域沿いの各種輸送(道路・鉄道)ルート」)。
一方、「成都〜武漢」間については、「成都〜重慶」間(写真参照)がすでに開通。したがって、この「成都〜上海」間の未開通区間は、「重慶〜宜昌」だけとなる(参照:「重慶〜宜昌間の高速道路整備状況」)(註6)。そのうち、「重慶〜宜昌」(約600km)間においては、「三峡ダム」により、上流部がダム湖となることで、本格的な船舶運行が可能となり(註7)、この区間の陸路による輸送が代替されることで、その分、トラックなどによる輸送距離が短縮できる。したがって、少し無理をすれば「上海〜南京〜武漢〜宜昌」間(約1,800km)の陸路輸送が可能となる。
中国における企業興亡衰退の歴史は、最終的にはいかに「物流」「販売」「代金回収」などの一貫体制を、(自社で)確立できるかにかかっているともいえる。この体制をいち早く、中国の大手企業はすべての業種にわたってほぼ確立しており、これが今後、企業発展の原動力となっていくことは間違いない。これに対して、中国に進出している日本企業はまだまだその点が弱い。一部企業ではすでに、中国企業との「販売提携」関係を結ぶものも現れてきているが、すべての企業がそのような立場を推し進められるものでもない。
したがって今後いかに、この中国内における「物流」「販売」(「代金回収」)体制を確立していくかが、企業発展のカギとなる。特に、発展の要素を内在した中西部地域への「物流」体制の確立は欠かせない。今後の中国内陸部への物流輸送(内陸部から沿海部への逆の場合もある)を考える場合、まず第一に、最大で2,400km(上海〜重慶)という距離の問題がある。これを解決する方策として、高速道路・鉄道・長江水運とが交差する主要都市にトラック専用の「拠点ターミナル」を設置し(註8)、さらにそれらと道路・鉄道が相互に交差する「サブ・ターミナル」とを連結することで、商品の保管・発送などの流通面を効率よく、しかも木目細やかに展開することが考えられる(参照:本欄「中国内陸部の物流拠点構想」)。 |
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(註6:なお、「重慶〜宜昌」間については、現在、「重慶」寄りの「梁平〜長寿」間の約110kmの高速道路が建設中である。(参照:本欄「重慶市周辺の高速道路整備状況」)
(註7:重慶市周辺地域の渇水期の水深は4mほどであり、下流域の上海との運行は現状では、120TEU型のバージ船が運行されている。この風景もダムが完成すると一変する。)
(註8:家電大手の「ハイアール」集団は物流センター(「ハイアール国際物流中心」)をスタートさせ、それを中核に国内42ヵ所に設置した配送センターのうち、主要都市については48時間以内に配送する体制を構築している。)
【備考】 本欄「中国内陸部の物流輸送構想」
【長江流域の洪水情報】
●武漢市周辺、「長江」水位の変遷
●長江の洪水、非鉄金属企業の被害(「カレント・トピックス」、金属鉱業事業団HP)
●長江流域環境管理に関する国際共同研究(国立環境研究所編)
(注)中国経済の発展に伴って、工業化も次第に中西部地域に移行するなか、中国大陸を南北に二分する形で流れる「長江」流域の水害は、今後、海外進出企業にとっても企業存続の危機に遭遇しかねない。中国政府ならびに省政府による木目細かな「水害ハザードマップ」が待たれる。
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