「成都〜上海」間の輸送モード展望
「重慶〜三峡ダム」間は船舶の運行増大も

                            国際ハイウェイプロジェクト推進委員会

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「成都〜上海」間の水運状況




 ここでの「水運」とは、言うまでもなく「長江」を利用した船舶輸送を意味する。本来、この船舶輸送がスムーズに機能できれば、中国における中西部と東部沿海地域との経済発展格差は、それほど顕著なものとはならなかったであろう。例えば、欧米諸国は、近代工業化初期段階において、この「水運」、欧州における「運河」、北米におけるミッシッピー川等を利用した「水運」によって、工業化をもたらし、今日においても十分に機能している。

     「長江」を運行する船舶 (重慶市)
 ところで、中国における「長江」を利用した水運発展の問題点は、「長江」という河川の性質に大きく左右されることである。それは、

 @年間を通じて、渇水期と増水期における水位差(武漢で20m、重慶で30m)が顕著で船舶運行が不定期とならざるを得ない。

 A中国大陸の南北を二分する形で河川が流れているため、物流供給上、架橋の架設が多くなり、大型船舶の航行が難しい(南京大橋のクリアランスが、最大で4,000トンクラスの船舶)。ところで、1万トン級の外航船は南京まで、運行が可能である。

 B渇水期と増水期の水位差からもたらされる「港湾機能」の低下による荷役時間の遅延増大。

 【写真説明】 2005年冬季における長江・湖北流域の情況。50数年来で最も長い冬季の日照り(旱魃)で、長江の水位は低下している。長江・武漢市漢口の河辺では、多くの埠頭上の船舶は座礁している。

 
(参照):本欄「「三峡ダム」上流域の土砂堆積問題

 
 :その他に、@中小のバージが往来するため航路の確保が困難、A夜間航行ができない、B洪水期における港湾機能の麻痺ーーなどが指摘できる。)

 ――などが、挙げられる。

 したがって、上海あるいは南京まで輸送された貨物は、ここでコンテナ専用バージ(20TEU積み)などで、宜昌(最大6隻運行)や重慶(最大2隻運行)などへ、曳航される(この場合、最大でも144TEU程度のコンテナ積載が限度となっている(写真参照:「長江上流域を航行する船舶」))。

  (参照):「長江航行における船舶通過の問題
          
 また、今後の焦点となるのが、現在、建設がすすめられている「三峡ダム」の存在である。

 @まず、「ダム」の下流域における水位の低下で、船舶の航行が難しくなる。

 Aある程度の船舶は、「ダム」手前の宜昌などで、貨物の荷揚げがなされる(註1

 註1:しかし実際には、「ダム」堤体の左岸側に、「シップロック」と「シップリフト」が設けられる。「シップロック」は各五段のヤードをもち、1万トン級(一説には5万トン級もある)の船舶が航行可能。また、「シップリフト」は船を吊り上げる方式で、3,000トンまでの旅客船を迅速に通過させることができるーーという。  

 
(参照):本欄「「三峡ダム」の全体計画概要
 

 ーーなどが予想される。


   ▼重慶長江第一大橋 (重慶市)
 その場合、後に述べる「道路」部門とも関連するが、今後、整備がすすむ高速道路(成都〜上海間)の進展具合によっては、「宜昌」(参照:本欄「武漢周辺における輸送体制の整備が改めて、水陸のモーダルシフトの要衝として、注目されることも考えられる。また同時に、「三峡ダム」から上流域の重慶までは、ダムによって、水位が安定的に上昇するため比較的大型船舶の航行も可能(註2となる。

 註2:湖北省周辺地域では、2003年6月までに完了する「三峡ダム」貯水後のダム上流域の水位上昇による大型船の航行を見越して、大型豪華客船の建造が進められている。2002年1〜9月期の観光客数は前年同期比20%増となっており、2003年はさらに多くの需要が見込まれる。)

 この場合、「重慶〜三峡ダム」(約600km)間の大量輸送も考えられる。すなわち、現在、「重慶〜宜昌」間の船舶による年間単方向輸送力は1,000万トンほどであるが、これがダムの完成によって、5,000万トンにまでアップすると予測されている(ところで、長江を直接遡ることができる専用船として、イースタン・カーライナー社(本社:東京)が運行する「フォーチュンリバー号註3が、1997年2月から就航している)

 註3:全長93.9m、全幅18.0m、深さ10.2m、積荷重量トン数5,600トン。 20フィートコンテナ200個を積載可能、中央部にクレーンを2機搭載。バラストタンクを活用することで長江の水位に合わせ、喫水を2.5〜6.65mに調整することができる。約1ヵ月に一度運航する不定期航路。長江中下流域(南京、上海など)と神戸・横浜港を結んでいる。)




 今後の焦点は、「三峡ダム」の竣工によってもたらされる「重慶〜三峡ダム(宜昌)」間の船舶輸送の最大限有効活用となる註9中国政府は重慶港の重点プロジェクトとして、九龍坡コンテナターミナルの建設をすでに完了している(参照:本欄「重慶港=九龍坡埠頭」)。この新しいコンテナターミナルは、長江の水面から約30mほど高い段丘の上に建設されている。形式は従来と同様に浮ドック式クレーンでコンテナを持ち上げ、ガントリ・クレーンが装備されており、「40フィート」コンテナの稼働も可能である。350m長のバースをもち、一時期に2,500TEUのコンテナ蔵置能力がある(註11。 

    ▼渇水期の重慶市の川面            ▼重慶南駅・コンテナターミナル
 

  
 註9:ここでは船舶輸送を「重慶〜三峡ダム」間としている。しかし中国当局は1万トン級以上の船舶でも「三峡ダム」下流域の航行は可能だとしている。その一つの根拠として、「ダム」によって下流域の水位の上昇がもたらされるという。実際、どれだけの水位上昇があるかは定かではないし、また果たして水位上昇がもたらされるかは疑問である。たとえ水位上昇がもたらされたとしても、長江を跨ぐ多数の橋梁の船舶クリアランスは上流にいくほど低下する。現在の水位(渇水期・増水期とも)でも1万トン級の船舶の航行は難しい(註10)。)

 (
註10:したがって、この「三峡ダム」は、長江の洪水防止効果や電力供給の増加策などもさることながら、果たして、3,000〜5,000トン級の船舶が年間を通じて、長江上流域と下流域とを安定的に運行できるかにかかっていると、いえなくはない。現状では、増水期(6〜8月末)の長江沿岸の港湾機能は、麻痺状態に近く、抜本的な解決策を見出すのが難しい。)

 (
註11:重慶市九龍坡港の国際コンテナ埠頭の建設が完了(2000年12月18日)した。この埠頭は、長江上流で初めてのコンテナ専用で、今後、内陸の成都・重慶および、これらの鉄道沿線地域のコンテナ貨物は、この埠頭から直接出港できる。コンテナ専用埠頭は成渝(成都〜重慶)鉄道の九龍坡(重慶南駅)鉄路編成駅に隣接し、敷地面積は7.3m2、標準コンテナで年間10万個の処理能力(将来的には、120万個に引き上げる計画)と、年間通過能力が335万トンの施設を有する埠頭である(参照:本欄「重慶市の各種輸送機関ルート図」)。




    
【備考】 本欄「中国内陸部の物流輸送構想




    
【長江流域の洪水情報】 
  
   ●
武漢市周辺、「長江」水位の変遷

   ●
長江の洪水、非鉄金属企業の被害(「カレント・トピックス」、金属鉱業事業団HP

   ●
長江流域環境管理に関する国際共同研究(国立環境研究所編)

)中国経済の発展に伴って、工業化も次第に中西部地域に移行するなか、中国大陸を南北に二分する形で流れる「長江」流域の水害は、今後、海外進出企業にとっても企業存続の危機に遭遇しかねない。中国政府ならびに省政府による木目細かな「水害ハザードマップ」が待たれる。
  


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